昭和31年 勤め人片倉政幸の日記

亡くなった父親が昭和31年に書いた日記を再録します。娘からの感想もふくめて、ある時代のある家族の記録として残します

6月9日(土)

 「今日は代務」と覚悟してゐた。福田氏つり大会

に出場のため七号に残る。いや砂利の多い事

といつたら全く参つてしまふ。

これで明朝又早く起きて出勤と思ふといさゝか

つらい思ひだ。「良く頑張るなあ」と人に感心され

るのが何だか変な気持になる。(親をかゝえてゐる事

と、借家に住んでゐる事が、非常なフタンになつてゐる

俺だ。人一倍働らいても、俺自身としては人並な

生活も出来ない。これも己が選んだ道だ。

渡辺幸次郎君とも話したが彼は一日々々を最も

たのしくするために努力してゐると云ふ  俺はそれが

出来ない現在 いや出来なくはないが 古い今や通用

しない世界観を持つ親との共同生活は思ふ様に

行かせるには面どうなのだ